やっぱり怖い、レーザー照射後の炎症後色素脱失?

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レーザーを強く当て過ぎると起こる色素脱失。一過性である炎症後の色素沈着と異なり、数年経っても白く色抜けした箇所の色素が戻ってこない場合があります。深在性色素性疾患に対する治療で起こることが多く、エンドポイントの見極めや照射の間隔も重要かと思われますが、特にQスイッチレーザーによる色素脱失の発生頻度を論文検索してみます。

河野太郎先生が2001年に報告された太田母斑に対するQスイッチルビーレーザー治療のデータ(n=175)では、最終レーザー照射後12ヶ月以上(平均33ヶ月)経過した時点の色素脱失はQスイッチルビーで16.8%、他施設との共同研究データではQスイッチアレキサンドライトレーザーで色素脱失は10.5%、Qヤグ(1,064nm)で7.6%の頻度でした。12ヶ月以上経過して色素脱失を認める症例(概ねスポット状の脱色素斑)では、色素が戻ることはないのでないかと考察で示唆しています。

Koto T, Nozaki M, Chan HH et al.  A retrospective study looking at the long-term complications of Q-switched ruby laser in the treatment of nevus of Ota.  Lasers Surg Med 2001;29:156-159.

実際、色素は戻ってくるのか? 手塚先生の太田母斑治療データでは、Qスイッチルビー照射後、患者の約13%で色素脱失を認め、そのうち約6割は1-2年で元に戻るも、4年経過しても色素が戻らないケースが約10%あったと報告されています。

手塚正, 藤井真, 遠藤英樹,他:Qスイッチルビーレーザーによる太田母斑の10年間の治療成績(第3報)—特に副作用としての脱色素斑の発生し易い条件の検討—.皮膚の科学,2:350-355, 2003.

一方で、レーザーの種類に関係なく、照射部位による差が大きかったと報告する論文もあり、異所性蒙古斑(n=53)に対してレーザー照射6ヶ月後で色素脱失を45%に認め、レーザーの種類別に有意差はなく、照射部位が体幹か四肢かの影響が大きかったと報告されています(体幹の色素脱失は62.5%、四肢では31%)。露出部のほうが表皮メラノサイトが多いため比較的色素が戻りやすい、また体幹は皮膚が厚いためレーザー出力を強くする傾向にあり表皮メラノサイトにより反応したのではと考察しています。

永田育子,杉本庸,橋川和信,他:異所性蒙古斑のレーザー治療後色素脱失に関する統計学的検討.日本レーザー医学会誌,29:26-29, 2008.

ピコセカンドレーザーを用いた治療に期待されていますが、色素脱失の頻度が半分と報告するデータも出ていますがフォローアップ期間が短いため、今後、より長期的なデータが望まれるところです。